- 2013.05.31
- 『世界の人事部(R)』Vol.49【アメリカ・中国の賃金事情について Part2】
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― 中国・米国・日本の人事労務レポート ―
『世界の人事部(R)』
Vol.49 2013.5.31】
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発信元:http://919.jp
こんにちは。『世界の人事部(R)』編集部です。
先日、妊娠や出産に関する知識や支援策を記した「生命(いのち)と女性
の手帳(仮称)」、いわゆる「女性手帳」の配布について、批判が相次い
でいることを受け、来年度からの配布が見送られることになりました。
批判の内容については、手帳の配布による「国による、個人の生き方への
干渉」を問題視したものが多かったようです。
確かに、ビジネスの現場においてグローバル化やダイバーシティ化への
必要性が叫ばれる中、個人の生き方や価値観の多様化も進んでいます。
それだけに、手帳を配布されることを通じて、自分のライフスタイルに
一石を投じられることに対する抵抗感は大きいかもしれません。
とはいえ、医学的な知識も含め、出産等に関する有益な情報は数多く
あるでしょうし、そうした情報を積極的に提供しようという試み自体は
必要なことだと感じます。「手帳の配布」という形にこだわらず、情報
インフラをうまく活用すれば、個々のライフスタイルや価値観に配慮した
情報提供も可能ではないでしょうか。
それでは、今月も情報満載でお届けしてまいります!
ぜひ、最後までご覧下さい。
□■CONTENTS□■─────────────────────────
【1】 今月の人事労務ニュース
【2】 現地のことは現地に聞け!人事労務問題解決のポイントを紹介。
【連載:第49回】『世界の人事の現場から』
【3】 人事・労務ご担当者必見。セミナー・イベント情報
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【1】 今月の人事労務ニュース
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中国、アメリカ、日本国内の人事、労務、採用、育成などに関するニュー
スを見出し形式でご紹介。
より詳しい情報が知りたい方は、下記サイトまでアクセス!
<中国> 上海クイックマイツ有限公司が、最新の法改正内容を網羅した
「上海市 人事・労務の法知識2013」の発行を決定
<中国> 労働報の調査によると、
上海市の従業員平均年収は年間10.6%増、
90%以上の従業員が5年間で一度の転職もなしと
収入は増加し、従業員の安定志向にも拍車
この他にも、中国の最新人事情報を随時更新中!
アクセスはこちらから⇒http://www.919myts.com.cn/Community.aspx?ID=1125,1213
アメリカの最新求人情報を随時更新中
アクセスはこちらから⇒http://www.919usa.com/
ベトナムの最新求人情報を随時更新中
アクセスはこちらから⇒http://919vn.com/
日本国内の最新人材業界ニュースを毎日更新中!
アクセスはこちらから⇒http://jinjibu.jp/GuestNewsTop.php
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【2】現地のことは現地に聞け!人事労務問題解決のポイントを紹介。
【連載:第49回】『世界の人事の現場から』
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【第49回テーマ】
「アメリカ・中国の賃金事情について Part2」
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◇編集部◇
今回のテーマは、3月の当メルマガに続きアメリカ、中国における
賃金についてです。
中国各省では、この4月から最低賃金が引き上げられました。
中でも、日系企業等の外資系企業の進出が盛んな上海市では、
月額最低賃金が前年度比170元増の1,620元となり、
5年前に比べると実に約7割も上昇し、全国最高水準となりました。
とはいえ、今回の中国の例に限らず、日系企業各社にとって
現地スタッフの人件費の上昇は大きな課題。中でも、賃金以外の手当等
については、当然のことながら各国で内容や基準も違ってくると思います。
実際のところ両国の人件費は、一般的に賃金のほか、
どのような手当や保険等で構成されているのでしょうか。
◆人事コンサルタント(アメリカ)◆
アメリカで一般的に人件費と言えば、サラリーやボーナス、
職種にもよりますがインセンティブを含めた「賃金」、健康保険や歯科、
眼科等の保険、さらに401K等の退職年金プラン等の「ベネフィット」、
そして日本の年金に当たる社会保障税や労災保険、障害者保険、
失業保険といった「強制保険」を合計したものになります。
また、休日や祭日に出勤した際の手当については支給されますが、
日本では一般的な通勤手当や住宅手当、扶養手当等の手当は、
こちらでは存在しません。
◇編集部◇
日本では一般的な通勤手当等が支給されないとのことですが、
この背景には、どのような考え方があるのでしょうか。
◆人事コンサルタント(アメリカ)◆
まず、手当には2つの種類があり、これらは、休日出勤手当等の
「仕事に直接関係ある手当」と、通勤手当や住宅手当、扶養手当等、
「仕事に直接関係のない手当」に分けることができます。
この内、アメリカで一般的に支給されているのは、
「仕事に関係のある手当」だけということになりますが、
その背景には公平性という考え方が大きく影響しています。
こちらでは、日本とは違い「仕事に直接関係がないものに対して
手当として給与を支給することは、不平等にならないか」という考え方が、
むしろ一般的です。
例えば、通勤手当について考えてみた時、
スタッフがどこに住むのかについて、これは本人の自由です。
会社側が指定することはできません。
こうした前提条件の中で、会社の近くに住んでいるスタッフには
何の補助もなく、遠方から出勤してくる人には手当が出るというのは
不平等ではないでしょうか。しかも、自宅の場所と仕事の成果の間には
何の因果関係はないわけですから。
扶養手当についても同様です。スタッフが既婚者である、
子供がいるという理由で、同じ業務をしているスタッフの間に
所得格差が生じるのは不平等だというのが、アメリカにおける一般的な感覚です。
日本では、終身雇用制に代表されるように社員は家族という文化が
一般的でしたから、諸手当を通じてスタッフの生活に対して配慮してきた
という背景があるかもしれません。
また、基本給の改定や引き下げは難しいけれど手当関係は改定や廃止が
比較的容易であること等も、給与の一部を諸手当として支給している
理由かもしれませんが、私たちの感覚からすると、日本の諸手当に
対するスタンスは特殊なものだと感じています。
◆人事コンサルタント(中国)◆
中国の人件費については、「賃金」に加え、医療保険や養老保険、
労災保険、失業保険、生育保険、住宅積立金からなる「社会保険」、
さらに業界や職種に応じて高温手当や保健食品手当といった
「諸手当」を合計したものになります。
ちなみに、中国では一般的に通勤手当が「諸手当」の一部として
支給されています。
ただ、中国でも通家族手当や住宅手当はアメリカ同様に支給されていませんし、
退職金といった制度もありません。その意味では、日本の諸手当に関する
スタンスは、中国やアメリカと比べて、とても従業員に配慮されたものに
なっているという印象ですね。
◇編集部◇
この高温手当や保健食品手当というのは、日本ではあまり耳慣れない
手当ですが、どのような内容の手当なのでしょうか。
◆人事コンサルタント(中国)◆
まず、高温手当ですが、これは夏季(6~9月)に、
33度以上の高温の環境で働くスタッフに対して、
月額200元を支給することが定められている手当です。
また、保健食品手当は、有害な物質に接触する環境で働くスタッフに、
健康食品を購入する費用として、1日につき一定の額を支払うことが
定められている手当になります。
いずれの手当についても、過酷な労働条件で働くスタッフの保護を
目的とした手当になっています。
◇編集部◇
また、これらの各種手当の改定は、一般的にいつ頃行われるのでしょうか。
◆人事コンサルタント(アメリカ)◆
まず、「強制保険」については、連邦及び州法(一部市法)によって
制定されますが、改定時期は日本と違って不定期です。
一方、「ベネフィット」については、基本的に会社及び保険会社の
規定に従って通常1年に一度改定されます。
◆人事コンサルタント(中国)◆
私たちがオフィスを構える上海市の場合、3月に社会保険料などを決める
「基数」の根拠数値となる上海市の前年度平均賃金が公布さるほか、
4月には上海市の最低賃金が変更されるケースが多いです。
ただ、日本の場合、法律は全国共通のものですが、中国では地方によって
状況が異なるケースも少なくありませんので注意が必要です。
ちなみに、社会保険の納付金額は、「基数」の37%を企業側が負担し、
11%を本人が負担すると定められています。
◇編集部◇
最後に、現地における人件費の増減に対して、
現地日系企業各社はどのように対応し、
またどのような点が課題になっているかについて教えてください。
◆人事コンサルタント(中国)◆
今や上海市に限らず人件費の高騰が進んでいる中国では、
現地日系企業に限らず、各企業とも業務の合理化を進めることで
人件費の増加に対応しています。
例えば、製造業をはじめとするブルーカラー中心の職場では、
機械化を促進したり、作業効率を高めるシステムを導入する等して、
「人」の関わる業務を限定させる取り組みによって人件費の圧縮を進めています。
また、ホワイトカラーが中心の職場では、給与制度や人事評価制度を
見直すことで、生産性を高めようとする取り組みを進める企業も多いようです。
◆人事コンサルタント(アメリカ)◆
こちらでは、人件費の増減そのものへの対応も確かに大切ですが、
それ以上に、「諸手当」に関する現地スタッフの理解を求めることの方が、
現場を運営する管理者にとっては重要な課題になっていると感じます。
というのも、先程からお話している通り、現地の給与体系は
「仕事に直接関係のない手当」は支給されないのが一般的です。
しかし、日本からの駐在員には、同じ立場で同じ仕事をするメンバーでも、
住宅手当や扶養手当はもちろん、帰省旅費や社用車や語学学校の学費と
いった手当まで支給されるケースがあります。こうした日本人駐在員への
優遇について、現地スタッフは当然のことながら不平等感を抱き、
それが社内的な摩擦を生んでいるケースや、モチベーションの低下に
つながっているケースも多々あります。
人件費の増加は確かに企業にとっては大きな負担です。ただ、利益を
生み出す源泉とも言える、今いるスタッフの能力を十分に引き出すこと
のできないことこそ、企業にとって最も大きなロスではないでしょうか。
その意味では、人件費増に対して、いかに費用を削減するかよりも、
いかにスタッフ間の待遇面の不公平感を払しょくし、全員が気持ちよく
仕事に打ち込める環境を整えることで利益を最大化させる取り組みの方が、
現地を管理する立場の方々にとっては重要な業務ではないかと感じます。
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